チキンナゲットとの日々
16歳の少年「Oddity」君が、学校に行く途中にイモムシを見つけ、
「チキンナゲット」と名付けて自分で飼うことにしました。
「調べてみたら、チキンナゲットは『スパイスブッシュ・スワロウテイル(クスノキカラスアゲハというアゲハチョウの一種)』の幼虫で、サナギになる前に黄色に変色する、とあったんだ。そこかしこへ向けて、絹のような糸を出していたよ」
Oddity君はこのように語ります。

そうしてOddity君はチキンナゲットがサナギになり、
羽化するまで飼うことに決めたのです。
Oddity君はチキンナゲットがサナギから羽化に至るその瞬間まで、
ストレスフリーに過ごせるよう小さなテラリウムを作ってあげました。
テラリウムとは、生き物をガラス容器などで飼育する方法です。

チキンナゲットにとってもこのテラリウムは居心地がよかったのか、
順調に成長していきました。
その後もOddity君はチキンナゲットが気持ちよく過ごせるよう、
様々な工夫をこらします。
チキンナゲットがサナギになると、
ネット上で彼の記録を見守る人たち同様、
Oddity君の期待は高まっていきました。
羽化の時
14日間という時間を、チキンナゲットはサナギとして過ごしました。
「ドキドキした。それでいて少し悲しかった」と、
Oddity君は当時のことを振り返ります。
そして、ついにチキンナゲットがその姿を現す時がやってきたのです。
チキンナゲットは、美しい蝶としての姿を披露しました。

惜しむらくはOddity君がその瞬間を、
マーチングバンドの練習で見逃してしまったことでしょうか?
しかも、チキンナゲットは「雌雄モザイク」という、
雌雄両方の特徴を持つ種類であることがわかりました。
こうして、チキンナゲットの羽化をしっかりと見届けたOddity君。
彼は一晩をチキンナゲットと共に過ごすと、
翌日別れを寂しく思いながらもチキンナゲットを空に放ちました。
「チキンナゲットがいなくなってしまうのは悲しかったけれど、彼が大空に羽ばたいてくれてとても気分が良かったよ」
彼はこのように語っています。
小さく、Oddity君の手にしがみつくようだったチキンナゲット。
そのチキンナゲットが大きくその羽根を広げ、
大空に飛び立ったその瞬間、
陽光と美しい羽根は溶けあい、空に消えて行きました。
チキンナゲットがこれから自然の中で自由に羽ばたいて、
精一杯生きてくれると良いですね。