死は突然やってきます。
それは大人だけではありません。
子どもだって同じなのです。
12歳のアシーナ・オーチャードちゃんは、
イギリスのレスター出身。
活発で明るい女の子でした。
スポーツが好きで、
ボクシングが特に大好きでした。
彼女には妹が4人、
弟が3人いるので兄弟たちともよく遊び、
面倒見の良いお姉さんです。
そんなアシーナちゃんは、
突然命を落としてしまいました。
アシーナちゃんの死後、
彼女の父親は彼女が日ごろ思っていたことを、
部屋を片付けていた時にある物を見つけたことで、
知ることになりました。
おでこのコブ
クリスマス前のある日のことでした。
アシーナちゃんは、
おでこにコブがあることに気付きました。
ぶつけた記憶もないし痛みもなかったので、
すぐに消えるだろうと気にしていませんでした。
しかしコブを見つけたその日のうちに、
彼女は自宅のキッチンで倒れてしまうのです。
すぐに病院へ運ばれ、検査を受けました。
すると、コブだと思っていたおでこの膨らみは、
骨肉腫だったと判明しました。
骨肉腫とは骨にできる悪性のガンのこと。
アシーナちゃんは7時間にも及ぶ手術を受け、
腫瘍を取り除きました。
その後、化学療法が開始されたのです。
命が尽きるまで
しかしガンの進行は早く、
体の至る所に転移しました。
アシーナちゃんは、
とうとうベッドから起き上がることすら、
できなくなってしまったのです。
そんな彼女を、
両親はただ見守ることしかできませんでした。
彼女の母親は、
アシーナちゃんのその変わり果てた姿を見て、
涙を流したそうです。
その時アシーナちゃんは、
「泣かないで、もっと前向きに考えよう」
と母親に言いました。
アシーナちゃんは自分のガンの進行が速いことも、
きちんと理解していました。
そんな中でも彼女は生きるために努力をして、
ガンと闘い続けたのです。
そして彼女は13歳の誕生日を迎えましたが数日後、
家族に見守られながら息を引き取ったのです。
その後、
家族はアシーナちゃんからのメッセージを、
受け取ることになるのです。
メッセージ
アシーナちゃんの死後、
父親は彼女の部屋の片付けをしているとき、
鏡の裏に彼女からのメッセージを見つけたのです。
そのメッセージは3000字以上もあり、
鏡の裏にびっしりと書かれていたのです。
「幸せになれるかどうかは、自分の気持ち次第。
物語は全てハッピーエンドでは終わらないもの。
でも、その物語に意味があればそれだけで良い。
生きることの意味は、意味のある生き方を見付けること。
それによって平凡な人生なのか、素晴らしい人生なのかが決まってくる。
幸せは目的ではなく、向かっていく方向のこと。
生きていることに感謝し、元気で自由に、いつまでも信念をもって、若くいること。
あの人は私の名前を知っていても、私の物語を知らない。
私の行ってきたことを聞いても、私の体験したことは知らない。
愛とはガラスのようなもので、見た目は美しいけれど、とても儚い。
毎日が特別な日々。
だから毎日を精一杯生きる。
明日、人生を終わらせる病気にかかるかもしれない。
人生は自分が悪くしない限り、絶対に悪くならないの。
愛は少ない。
人生は不思議。
永遠に続くものなど存在しない。
人は変わる。
人生はだれもが遊べるゲームだけど、その中で唯一のご褒美は愛かもしれない。
もし誰かがあなたのことを愛しているなら、
どんなに状況が厳しなってもあなたを手放すことは決してない。
人生は良い時もあれば悪い時もあるのは、悪い時がなければ、良い時の意味もないのだから。
私は、自分が心を許せるような相手と恋に落ちるのを待っている。
愛とは、将来を過ごせる相手がいることじゃなくて、その相手なしでは考えられない将来のこと。
あなたが私のそばにいてくれることがわかっている限り、泣く理由はない。」
父親はこのメッセージを読み、
涙したと言います。
彼女の父親は、このようにも語りました。
「本人は何も言っていなかったけど、それがまた娘らしい。娘は物事をよく考え、なにか書くのが好きな子でした。娘は亡くなってしまいましたが、この娘の書いた文章を読むと、娘が生き続けているような気がします。」
彼女が思いを書き綴った鏡は、
今も大切に保管されているそうです。
病に蝕まれてもアシーナちゃんは人生の美しさを見失わず、
このような素敵な文章を書き残しました。
彼女は鏡を見つめるたびに、
自分で書いたメッセージを思い出した結果、
生きる努力を怠らなかったのでしょう。