迷子のおばあさん
韓国の釜山で起こった出来事です。
西区(ソグ)の派出所に1本の通報が入ります。
おばあさんが包みを持ったまま、
1時間以上も同じ場所をうろついている、
とのことでした。
パク巡査は同僚と一緒に現場へ行き、
大きな風呂敷袋を2つ持つ年配の女性に、
名前や住所などを質問してみます。
しかし女性は、
「娘が赤ちゃんを生んで病院にいる」
と言い続けるのみでした。
同じやりとりを重ね、
このおばあさんは認知症なのだと、
パク巡査は気づきました。
女性は娘や自分の名前すら思い出せず、
包みを胸に押し付けるようにして、
不安そうな表情で抱きしめています。
「娘が子を生んだ」
と認知症のおばあさんが言い続けるのは、
なぜでしょうか?
「娘が子を産んだ」
女性のことを調べている間、
彼女を派出所へ連れて行きました。
しかし包みが重そうだったので、
降ろすように言うと
「ダメ!」と強く拒絶されます。
女性の大事そうにしてる包みが気になりましたが、
そっとすることにしました。
パク巡査は地道な調査を進め、
数時間後にやっと名前、住所、
娘さんのいる病院が分かりました。
パク巡査は2人の同僚と一緒に、
女性を病院へ送ります。
娘さんと会った瞬間、
女性は安堵のため息をついて、
包みを解き始めます。
そこから出てきたものを見た時、
その場の全員が言葉を失くしました。
包みに入っていたのは、
わかめスープと野菜のおかずと、
ごはんと布団だったのです。
包みの中身
出産した娘さんのために、
準備したのでしょう。
包みに入っていたわかめスープには、
カルシウムが多く含まれており、
出産後の母親に食べさせる習慣が、
韓国にあるのです。
自分の名前も忘れるほど認知症が進んでいるのに、
ワカメスープを娘さんに食べさせることだけは覚えていた、
母親の姿にパク巡査は感動したと言います。
母親は娘さんへ、
「ほら、はやく食べなさい」
と言いながらわかめスープを差し出しました。
娘さんは涙を流しながら、
冷たいスープを受け取って食べたそうです。
母親の子に対する愛情深さが伝わる、
美しいエピソードでしたね。
母性愛は認知症すら、
凌駕するのかもしれません。