乳がんの女性とトトロ
ある日、
子猫が小屋に捨てられているのが、
見つかりました。
友人に勧められた女性は、
その子猫を婚約者と共に、
見に行くことにしました。
女性は成猫を数匹飼っていましたが、
そのうちの1匹を亡くしたばかりでした。
心にぽっかりと空いてしまった穴を、
埋められるものならと子猫の存在を、
教えてくれたのです。
その子猫は名前を、
「トトロ」と言いました。
農場に住み着いているという、
トトロを見に行った女性は、
何か心がとても癒されるのを感じました。
何度かトトロと顔を合わせているうちに、
女性は家に連れて帰ることを決心しました。
一方でこの時、
女性は乳がんに侵されていました。
女性の婚約者は、
彼女が乳腺腫瘍摘出手術を受けた後で、
トトロを家に迎え入れることにしました。
トトロは生まれてからずっと、
小屋の周辺で暮らしていましたが、
すぐに新しい家に慣れ、
先住猫の2匹とも仲良くなりました。
抱っこ大好き猫
トトロはとても元気な子猫で、
新しい環境でも1日中力いっぱい、
遊んで暮らしていました。
そして生まれて初めて抱っこをしてもらうと、
抱っこが大好きな子猫になりました。
その可愛い顔で抱っこをねだります。
「トトロは私たちの肩に乗ってとても嬉しそうに喉をゴロゴロ鳴らすのよ。私が眠っていると、かまってほしくて私のまつげをポンポン叩いて起こすの。」
女性は楽しそうにこう話します。
乳がんの治療が続く中、
トトロは女性といつも一緒に過ごしました。
毎晩トトロは女性の枕元で、
ゴロゴロと喉を鳴らします。
トトロにとって女性は、
大好きなお母さんなのでしょう。
トトロの思いやり
乳がんの治療の過程で、
女性の髪は化学療法の影響を受けて、
すっかり抜け落ちてしまいました。
するとトトロが髪の代わりに、
いつも女性の頭を温めるのです。
「ボクが髪の代わりに頭を暖めてあげるよ」
とでも言うようにトトロは女性の頭を、
自分の毛皮ですっぽり覆います。
トトロは女性の大きな心の支えになり、
どんな薬よりも効き目のある、
特効薬となったのです。
互いに心が惹かれあって、
一緒に過ごす女性とトトロ。
猫の思いやりが、
心に染みるひとときです。
女性の婚約者さんは、
トトロにヤキモチを焼くかもしれませんが、
これからもずっとこの穏やかな生活が、
続くことを願ってやみません。