現代の人類、正式名称ホモサピエンスは、約20万年前に登場したと言われています。
そこから現在の私たちの姿になるには長い時間をかけ、さまざまな進化を繰り返してきました。
例えば体毛や一部の骨の形など、
この進化を証明する痕跡が私たちの身体に「退化器官」として残されています。
今回はそんな「退化器官」の例を紹介して行こうと思います。
手首の腱と眼球の端のピンク色
手のひらを上にして、腕をテーブルにつけてみてください。
この時、親指と小指をくっつけたまま、手を少し上にあげます。
この動作で手首の腱がはっきり表れる人と現れない人がいます。
この腱は、長掌筋と呼ばれる器官の名残です。
この筋肉は上腕部から手首にかけて伸びており、元々は手首の動きをサポートする筋肉でした。
しかし、現代の人類にとっては必要がなくなったため、
現代人のおよそ13%しか持っていないということです。
この筋肉は、現在の人類にとってはなんの意味も持たなくなってしまったもので、
その有無が日常生活に与える影響はなにもないそうです。
目を大きく見開いて鏡で見てみてください。
眼球の端の方にピンク色の部分が見えますね。
これは「瞬膜」という器官の名残だと言われ、
爬虫類が目を閉じる時に目の保護膜として機能するものです。
人類はこの瞬膜の代わりにまつ毛を進化させたので、
このピンク色の部分は必要なくなったというわけです。
このピンク色の部分はほとんどの人が持っているそうですが、これも痕跡が残ったものというわけです。
ピクピク動く耳と親知らず
目を閉じて、少し耳に力を込めると、耳がピクピクと動いたりしませんか?
かつてこの機能は重要な機能を担っていました。
というのも耳を動かすことによって、音の聞こえる範囲が広がって危険を察知しやすくなるのです。
現代でも、猫などの動物はこの筋肉を今でも活用しています。
野生で生きるのに必要な機能であったというわけです。
親知らずを抜くために何度も歯医者に通い、痛い思いを随分としたという方も多くいらっしゃると思います。
急に生えてきて激しい痛みをもたらしてくるものの、必要性はまるでないこの親知らず。
これも実は退化器官なのです。
かつて人類は、今よりもはるかに硬い植物や木の根を食べていました。
そのため親知らずは必要不可欠の存在だったのですが、
食べ物がより柔らかく簡単に噛めるようなものに変わっていったことで、
私たちの顎もどんどん小さくなっていき、必要な歯の本数も減っていったのです。
現在ではほとんどの霊長類が親知らずを持っていませんが、
ベジタリアンであるゴリラにはいまだにあるようです。
鳥肌
寒い時やゾッとしたときなど、鳥肌が立って全身毛がピンと立つような感じを受けると思います。
これは、人類にしっかりした体毛が備わっていたころ、重要な意味をもっていた器官の名残です。
体毛が逆立つことで体温が保たれるだけではなく、
危機に直面した時に体毛を逆立たせて身体を大きく見せ、敵をひるませる役割をもっていたのです。
猫などが全身の毛を逆立てて威嚇をしている様などがそれに当たりますね。
人類が長い年月をかけて繰り返してきた進化。
これらの痕跡を実際にその目で確認できる、というのはとても興味深いものですね。
さらに時が経った時、もしかした退化器官は増えているかもしれません。
日頃何気なく使っている体の機能、
この先なくなるかもしれないと思えば愛おしく思えてくるかもしれませんね。