兵士と子猫
アメリカ陸軍兵士のクリスティン・ボールディンさんは、
アフガニスタンに派遣されていました。
その時、とある母猫と子猫に出会いました。
子猫のお名前は「フェリックス」。
フェリックスは小脳形成不全という障害を抱えており、
全身を上手く動かせずに歩行がぐらついていました。
クリスティンさんがフェリックスを起こしてみるとひっくり返ってしまい、
何度やっても失敗してしまったそうです。
フェリックスはとても臆病な様子で、
クリスティンさんが近づくと威嚇していましたが、
母猫はクリスティンさんに体を擦りつけるなど人に慣れた様子があり、
次第にフェリックスもクリスティンさんに懐くようになりました。
可愛らしい母子の姿を眺める度に、
クリスティンさんは母子をどうにか自国のアメリカに、
連れ帰ることを考えていました。
そんなとき、母猫がフェリックスの前から消えてしまいました。
クリスティンさんはフェリックスをアメリカに連れ帰り、
育てる決意を固めました。
母猫が何を思い、フェリックスの元から姿を消したのか分かりませんが、
もしかしたら母猫はクリスティンさんに、
フェリックスのことを頼みたかったのかもしれません。
それ程母猫も、
フェリックスもクリスティンさんのことを信頼していたのでしょう。
決死の行動
涙を流すことも多かったそうです。
何とかフェリックスを連れ帰りたいクリスティンさんは、
帰国する兵士が乗る飛行機に乗せてもらえないかと交渉するも、
断られてしまいます。
しかし、クリスティンさんは諦めません。
次に行きついたのは、地元の獣医さんでした。
するとパム・コンスタブルさんという、
アフガニスタンの首都カブールで動物保護活動を行っている方の、
紹介にこぎつけることができました。
クリスティンさんはパムさんに連絡し、
事情を説明するとクリスティンさんの任務中にフェリックスを預かり、
クリスティンさんが帰国した頃、
自宅に送って下さると約束してくれたのです。
クリスティンさんは地雷が埋まっている地域を通り、
車で1時間以上かかるカブールまで向かい、
フェリックスをパムさんに託したのでした。
アフガニスタンの情勢は常に緊迫したものだったので、
クリスティンさんは2度と会えないかもしれないとフェリックスを託す時、
涙が止まりませんでした。
ふたりのその後
涙の別れの後、時は流れ、クリスティンさんの帰国が決まりました。
カブールから長い旅を終え、遂にフェリックスは第2の母、
クリスティンさんの元に辿り着いたのです!
体が不自由なままのフェリックスですが、
預かってくれていたパムさんは
「フェリックスは全てのことを自分でできる方法を身につけました。多くの人ができないと思っていたことを、フェリックスはやり遂げたのです。」
と話してくれました。
すっかり成猫の体つきではあるものの、
ふらつきがあるフェリックスは自分で生きる方法を見つけ、
成長していたのです。
他の猫と同じようにオモチャに飛びかかり、
ジャンプしたり猫砂の使い方もマスターしていました。
幸せな生活を手に入れたフェリックスには、
クリスティンさんに愛情という形で恩返しをしていく事でしょう。
出典:エウレカ!